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城門近くにある 丘ぞいの庭。


オリーブの木の下に 
あの方が たった独りおられる。


そして外にたたずむ もう一人。


しりごみ、惑い、嘆きのうちに彼は呻いた。


「汝に祈ります。どうかこの杯を私から過ぎ去らせてください。

このような苦しみに耐えることができないのです。

自分には飲めません。

おお主よ、私をお救いください。私は沈んでしまいます。」


この苦悶に当惑した私の目に映ったのは、

オリーブの木の下にある大いなる暗闇の恐怖―― 
ただそれだけだった。



「待とう」

この言葉に 木の葉はゆらめき、
ひと筋の雲は 
輝く月表(つきおもて)に影を落とした。



愛する者(彼)は耳をすませた。何かが彼の内からこみ上げてきた。


「わが愛するお方は 前にも嘆願されたはずではなかったろうか。
ああ私は この方を愛する者と言われるにもはや値しない。

愛は、愛なるお方を悲しませたりはしないはずだから。
にもかかわらず、私は自分をそのような者だと信じ込んでいた。

まもなく、おお愛する方、
まもなく汝は私から去っていかれるだろう。

汝の御声を聴きながらも
汝に従わなかったから。」



そのとき、突如として
復活祭の月が 輝き出で、


漆黒の空気を
木々のすき間を
くまなく照らし出した。


庭それ自体が あたかも 聖なる臨在に
目を覚ましたかのようだった。


その時 私は見た。

彼が その場に駆け込んで行くのを。


じっと 顔を伏せ
沈黙のうちに 彼はあった

どんな言葉も 話されなかった。


そこには ただ うちのめされ、壊れ、
良心の咎めを いかにしても 慰め得ない者があった。


黙して語らず 彼はそこにあった。

オリーブの木の下に。

ーーーーー


夜露が現れ、
庭中が――もう二度と 微笑むことができないかのように――
泣いていた。


夜風が立ち、兵陵に吹きすさびながら 彼と共に嘆いていた。


そして 霞(かすみ)中に 彼はある幻を見た。

たった独りで――たった独りで杯をお取りになった 
あの方の御姿を。



ああ、うめき声が洩れた。

この痛み以外なら、この絶望以外の痛みなら
どんなものでも お与えください――
彼は叫んだ。



そして 悔悟のうちに
ふたたび 主の御足に ひれ伏した。


庭全体が 畏れのうちに 息を飲んだ。


木々の間に 明々とした沈黙が漂い
喜ぶ 御使いたち。


なぜなら、掟が――、
愛なる方の掟が、

耳をすませ
この言葉を待っていたからだ。


地の言葉を超えし
声にならない霊のことばを持って

愛する者は 低く横たわり
主を崇めた。

かくも甘美な奥義に飾られた その道の主であられる方を。


彼が見たこと、
それは、どんな御使いも明かしたことのないものだった。


――オリーブの木の下で。



どんな御使いも語ったことのないもの。
しかし私は知っていた。


あの晩、ゲッセマネが彼にその秘密を明かしたということを。
そして もはや彼が行かずにはいられない、ということを。


悔悛した者として
激しく愛する者として
多くを赦された者として、

静かに、しずかに―。


けっして忘れることのできない
愛の極という紅露でじっとり濡れた 
あの御頭を。

愛の泉の湧き出していた 
あのまなざしを。


――ゲッセマネの庭の中で。



おお愛。汝のその愛をいかに歌うことができよう!
オリーブの木の間で 見いだされし その愛を。


澄み渡った光の池に 降り行き、
わが水差しを 
その水で満たしたい。
光輝くことばで満たしたい!


おお 究極のこの調べをいかに奏でることができよう!


わが思いを照らし出す
深遠なる言葉、
炎のことば。


否、そのようなものでさえもない、おお愛よ。
貧しき口で あの夜を いかに表現しえよう。


――オリーブの木の下で。




Amy Carmichael,
The Fellowship of His Suffering, 私訳










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