夜明けに、マグダラのマリヤは

墓のところに一人たたずみ泣いていました。



マリヤは、死んで埋葬されたイエスを探していたのです。


主が去った今、何ものも彼女の心の空洞を

満たすことはできませんでした。


そして耐えがたいこの悲嘆を和らげてくれる人もいませんでした。


そう、天の大天使であるあなたがたでさえも、

その悲しみの日に彼女を慰めることができなかったのです。


彼女はただひたすら、埋葬された王を探し求め、

その亡骸を引き取ろうとしていたのです。



墓の脇に彼女は最後まで残り、そして夜の明けないうちに、

再び墓の所に戻ってきました。


そして、そこに救い主も彼女のために来てくださったのです。

主の彼女に対する愛は、彼女のそれを凌ぐものでした。



やさしく主は彼女にご自身の御顔を顕してくださり、

その深い心の芯奥から、一言を発せられました。


マリヤは主の御声を知っていました。――その恵み深き声を。


それは全き平安に満ちたものであり、彼女の心を祝するものでした。



おおわが神!

いつの日か、私も、マグダラのマリヤのように、汝を探し求めたい。

そして汝に近づきたい。



広大な大地、どこまでも拡がる平原を駈け抜けて、

私はわが王にまみえようと、主を探し求めました。



緑色の木々、そして蒼穹の空の下に

美しく花々が咲き乱れていましたが、

私はわが主を求めて泣きました。



おお 光り輝く自然。

王を慕い求めるわが眼が、主の御顔をまみえない限り、

自然よ、あなたでさえも広漠とした一つの墓場に過ぎません。



私を慰め、祝してくださる一つの心を私は必要としています。

そして決して消え去ることのない力強い支えを。



自分のか弱ささえもひっくるめて、私を丸ごと愛してくださる方、

そして昼も夜も決して私を見放さないでいてくださる方を。



この地上の被造物の中で、そのような愛をもって私を愛し、

決して死を見ない人は誰一人いません。



人となった神。

このお方以外に、私の必要を知っていてくださる方はいません。


この方、そうです、この方だけが、

私の涙と叫びを理解してくださいます。

愛しい主、私が必要としている全てを汝は分かってくださっています。



私の心を勝ち取るために、天より汝はおいでくださいました。

そして私のために、汝の尊い血が流されたのです、

おお慕わしいわが王!


そして私たちの祭壇の上に、汝は宿ってくださっています。



ですから、たとい、この地上で汝の御顔を見ることができなくても、

そして、汝の御声という天的な調べを聴くことができなくても、


それでも、汝の恵みによって、

私は毎瞬間を、生きていくことができます。

そして汝の神聖なお心の中で、私は喜ぶことができます。



おおイエスの心。優しさの宝庫。


わが喜びは、汝ご自身であり、

汝のうちに、私は安心して身を隠します。


小さい時から、汝は私の心を魅了してこられました。

わが人生の最期の夕べまで、どうか私と共にいてください。



私の持てるものはことごとく、汝にお捧げしました。

わが内にある深い願いは、全て汝に知られています。



誰であれ、汝のために自分のいのちを失う者は、

それを自分のものとします。



どうか、私のいのちが、永遠に汝の内で

――ただ汝の内のみで――失われたものとなりますように。



万事を見通す汝の目から見るなら、私の内にある義など

全く無価値なものであることを、私はよく存じております。



呼吸の一つ一つを、わが心は汝より汲み取らなくてはなりません。

そうして初めて、人生を通した自分の犠牲は意味をなします。



御使いでさえも、汝の目には汚点なしには映りません。

そして汝の律法は、雷鳴の中で与えられました。


しかし、私のイエス様!

私は汝を怖がっていませんし、おののいてもいません。



私のために、カルバリーの丘で、汝の心は引き裂かれました。



汝と顔を合わせ、その栄光のうちに、汝にまみえるために、

魂は、炎の中を通らなければなりません。



この地上で、

清めのためのそういった場所を選ぶことができるのだとしたら、

汝の大いなる心望という燃えるような愛を私は望みます!



そうすれば、この地に追放されしわが魂は、

全き愛という一つの叫びをもって、

死の命令に対し答えを出すでしょう。



そうして後、御父の国である天に、まっすぐに飛翔していき、

時を置かずして、

上なる家に辿り着くでしょう。




1895年10月
Thérèse of Lisieux, To the sacred heart,
私訳








「神の主権」――A・W・トーザー著 『聖なる方を知る知識』 第22章 (前篇)

絶望する者の心に射し込む福音の光