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17世紀のピューリタン家族


それではここで、説教者、信仰復興者、(魂を勝ち取る)伝道者としてのバクスターを少し見てみることにしよう。

疲れを知らないこのピューリタンは、祈りの内に神の御顔を見つめ、御霊の甘美な声に耳を傾けていた。

どんな強欲な守銭奴といえども、バクスターが魂を愛したほどには、金銭を愛することはできなかっただろう。また悔い改めようとしない罪びとたちに対する彼の粘り強さにも尋常でないものがあった。彼の書いた二行連句からもその情熱が伝わってくる。

(目の前にいるこの人に)もう二度と説教する機会はないかもしれないという思いと覚悟で、私は説教してきた。

一人の死にゆく人間が、もう一人の死にゆく人間へとささぐる思いを持って。



今日の説教者にとって、「改宗者は、(彼を導いた)霊的父親の生き写しとなる」という格言は、耳の痛いものだろう。

バクスターの魂から放たれていた火の粉は、彼の周りにいた魂にも飛び火していたようである。彼は次のように記録している。「昼となく夜となく、彼らは、隣人たちの救いを熱望していた。」

そう、バクスターの情熱は確かに「感染力」を持って周囲に伝播していたのだ。

主はほむべきかな、、キッデルミンスターの教会はついに人が入りきれなくなり、二階部分を増築しなければならなくなった。主日だけでなく平日の集会においても、状況は同じである。

主日になると、その地域一帯にはびこっていた無秩序と騒擾がおさまり、町は静かになった。日曜の朝、通りを歩くと、何百という家々の軒先から、家族みんなで詩篇を歌う、その歌声が聞こえてくる。

私がキッデルミンスターに来た当初、この界隈で神を礼拝し、御名を呼び求めている家庭は、ただ一軒しか存在していなかった。

しかし、私がそこを去る時には、通り全体が一軒のこらず神を礼拝する、というような「敬虔な界隈」がいくつも生まれていた。教区には600名ほどの信徒がいたが、その中で私が救いに全き確信を持つことのできなかった魂は12名といなかった。



バクスターのことを「怠惰者」とあざける者たちがいたが、そういった人々は、次の言葉を聞くべきである。

私はすべての聖徒の中でも最も取るに足りない者であることを自覚しています。しかしながら、私は自分を非難する者たちに対し、恐れずに答えようと思います。

――私の労苦に比べたら、町の商人たちの労苦など、「体のための満足に過ぎない」といっても言い過ぎではないと。

彼らの労苦は、健康を保持させるものですが、私のそれは、ひたすら消耗させるものです。彼らは安楽に働いていますが、私は絶え間ない苦痛の中で労しています。

彼らには有り余るほど余暇の時間があります。しかし私には食事をする時間さえ、まともにありません。

彼らが働いたところで、それを妨害する人は誰もいません。しかし自分の場合、奉仕すればするほど、私はますます忌み嫌われ、困難が身に降りかかってくるのです。



今日、著名な神学者たちは、「神学理論を練って作り出すこと」に努めているが――読者はここに注意――こういった理論家たちは、魂を勝ち取る伝道者としてはほとんど知られていない。

彼ら聖書批評家たちは、ふかふかの安楽ベッドにゆったり横たわりながら、「あつらえむきの神学」という頭知識でいっぱいのスーツを「ほら諸君、受け取りたまえ」と私たちに提供しているのではないだろうか。

しかしバクスターはそうではなかった。彼の魂は、死にゆく魂のためにうめいていた。

彼は勇んで外に出、永遠の契約であるイエスの血潮のメッセージを宣べ伝えた。

そう、彼は神学の〈象牙の塔〉に閉じこもり一人、悦に浸っている夢想家などではなかったのだ。

また彼は、死せる教義を解剖し、日がな、神学の実験にうつつを抜かしているような人でもなかった。ウェスレーと同じように、バクスターは、実践的な聖徒(practical saint)だったのである。

こうして19年に渡り、バクスターはキッデルミンスター地区で牧会の労をとった。ある著述家は、そのことを次のように美しく表現している。

バクスターの説教と、彼の聖い生活から溢れ出る力を通し、残虐さと不品行の巣窟であったこの地域一帯が、まことの敬虔さに満ちた庭園へと変えられたのである。



この作家はさらにこう付け加えている。

17世紀に生きた神学者の中でも際立って清い聖徒であったリチャード・バクスター。

教会の一致を求め、そのために戦い、祈り、犠牲を惜しむことのなかった彼が、こともあろうに、プロテスタント教徒の裁判官と、(同じくプロテスタント教徒の)陪審によって、有罪判決を言い渡され、投獄されなければならなかったとは!

これは倫理的歪曲としか言えない事実である。




(その3)につづきます。




キッデルミンスターのリチャード・バクスター(その3)

キッデルミンスターのリチャード・バクスター(レオナルド・ラーベンヒル著)その1