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北海道の自然


伝道は、恩寵の体験の解説でなければならぬ。

その解説の最も有力にして且、自他を誤る事なきものは、個人の生活そのものである。

言葉は欺きやすい。然し生活は欺かない。

生活から迸(ほとばし)り出る言葉には、特別の権威がある。人いづくんぞ隠さんや。

己の持つ恩寵の体験を豊かにせよ。それは己自身にとっても必要欠く可らざる営養である。

或る場合には、一語も言はずともよし。一歩も出ずともよし。

只在りて活けるだけにてよし。

故に見よ。もっとも偉大なる伝道は、屡々(しばしば)瀕死の病人がしたではないか。

無力にして貧しき者、無学なる者がしたではないか。

見よ。幾多の大説教家の大雄弁が、時にキリストを宣べ伝ふべく最も無力にして貧弱なるを。

ここに真実なるイエスの僕一人を活きしめよ。

その二人また三人を相結ばしめよ。

然る時、その周囲に、イエスより発する光の波の次第々々に拡がるを見るであらう。

此少数の忠信なるイエスの僕達がイエスと共に活けるその事実は、暗夜の燈火の如く、四方に輝き出でざるを得ない。

而して多くの人々を惹きつけざるを得ない。

「山の上の町は、隠るる事なし。」

斯る忠信なる生活をだにあらしめば、人は道を求め寄る人々の多きに苦むのみであらう。

☆☆

伝道の事業化は、呪ふべきである。

事業化はすなわち人業化である。故に、事功を追ひ分量を気に病む。

呪ふべきは、伝道の人業化である。

何者ぞ神の聖業を、その大御手より簒奪(さんだつ)せんとはする。

すべての誉は、之を主にのみ帰せよ。

我らをして決して己が誉を求めしむるなかれ。

決して事功を追はしむるなかれ。

神与へ、神とり給ふ。我らをして、只神をほめたたへしめよ。

我らが為し得る唯一の伝道方法は是である。

心から神を讃める事である――心から



三谷隆正、『問題の所在』(「伝道真髄」より)


福音をたずさえ、世界に飛び出す若者たち―レオナルド・ドーバー青年、西インド諸島へ行く(モラヴィア兄弟団、18世紀)その1

人生に於いて一番貴い事―三谷隆正