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(対象:小学校高学年以上)
自分の敵(てき)をあいしなさい。マタイ5:44
屋根わらのなぞ
今から300年ほど前、スイスのエンメンタールというところに、一人の年老いた牧師さんがすんでいました。
牧師さんの名前はペテロで、彼は奥さんと一緒に、エンメンタールの小さな村にくらしていました。
ペテロ牧師と奥さんは、「クリスチャンは、人を殺したり、戦争に行ったりしてはいけない」とかたく信じていました。
なぜなら、イエスさまがこうおっしゃっているからです。
「しかし、わたしはあなたがたに言います。自分の敵を愛し、迫害(はくがい)する者のために祈りなさい」(マタイ5:44)。
でもその当時、スイスの政府(せいふ)は、「そういう考えはけしからん!」と言って、戦争に行かないペテロさんたちのようなクリスチャンを牢屋(ろうや)に入れたり、殺したりしていました。
☆☆

ある晩、三人の若者たちが、村のはずれのところで話していました。
彼らはペテロさんが人を殺したり、戦争に行ったりしないまじめなクリスチャンであるということをきいて、腹を立てていました。
そして三人でひそひそと悪だくみを始めました。
一人の男がいいました。「そうだ。ペテロの家の屋根にしきつめてあるわらを下に投げ落とそう。いい気味だ。」
すると残りの二人も、「それはいい考えだ」と言って、ニヤニヤ笑いました。
こうして夜中に、三人はペテロ牧師の家にこっそり近づき、屋根の上にのぼりました。
そして、どんどん屋根わらを下に打ち落としていったのです。
☆☆
ガザ ガサ ガサ、、、
ぐっすりと眠っていたペテロさんは、天井のあたりから聞こえてくる奇妙(きみょう)な音に気づき、目を開けました。
「おかしいな。なんの音だろう?」
ペテロさんは、かんぬきを外し、そーっと家の外に出てみました。
するとどうでしょう。夜の暗がりに、三人の男たちがみえました。
そして彼らはわき目もふらず、屋根わらを下に落としていたのです!
「ああ、私たちが戦争に行かないということで、この人たちはいやがらせに来たんだな。」
ペテロさんはかなしげにつぶやきました。
そして天を見上げ、祈りました。
「イエスさま、私はどうすればいいでしょうか。彼らは私の家をこわそうとしています。
でも、あなたは、『自分の敵をあいしなさい』とおっしゃいました。
どうか私があなたの目にただしいことを行なうことができるよう、助けてください。」
こうしてペテロ牧師は家の中に戻りました。
☆☆
「カテリーナ、カテリーナ。」彼は寝ている奥さんをやさしく起こしました。
「こんな夜中にすまないがね、今、外に、三人、私たちの『客』が来ているんだ。それでな、私は考えたんだ。彼らに夕食をごちそうしてあげようって。」
カテリーナさんは、すぐに夫の気持ちを理解(りかい)しました。
そして起きると、台所に行ってランプをともし、すぐさま食事のしたくをはじめました。
☆☆
食事のテーブルがととのうと、ペテロさんはもう一度外に出て、屋根の上にいる若者たちに呼びかけました。
「お前さんたち。長くはたらいてお疲れだろう。きっと腹がすいたにちがいない。
晩ご飯の用意はできとるよ。
さあさあ、食事が冷めないうちに、中に入って、たんとめしあがり。」
☆☆
若者たちは、とても気まずそうに家の中に入ってきました。
ペテロさんは若者たちをイスにつかせると、食事の祈りを始めました。
そして、「主よ、どうかこの若い人たちを祝福してください」と心から祈りました。
若者たちは、目を白黒させながら、その祈りをきいていました。そして思いました。
〈なぜ、この人たちは怒らないだろう?〉
〈なぜ、こんなにやさしいのだろう?〉
〈なぜ、いやがらせをしにきた僕たちのために祝福の祈りをしてくれるんだろう?〉
そうすると彼らは、自分たちのしたことが恥ずかしくてたまらなくなりました。
――そう、目の前に出された料理を一口も食べることができないほどに!
しばらくすると、たまらなくなった一人の若者が外に飛び出していきました。
すると残りの二人も、あわてて出ていきました。
☆☆
ガサッ、ガサッ、ガサッ、、、
しばらくすると、また屋根の方から音がきこえてきました。
でも、今度の音は、さきほどのように、わらを下に突き落とす音ではありませんでした。
そうです。この音は、反省した若者たちが、いっしょうけんめい、わらを元どおりに屋根に戻そうとしている音だったのです!
ーおしまいー
参考文献
Elizabeth H.Bauman, Coals of Fire,1954
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