今日はちょっと息抜きに、ある子どもの書いたとってもかわいい手紙をみなさんに紹介したいと思います。


手紙の書き主は、テオンくんという8才~10才くらいの男の子です。


そしてこの子がこの手紙をしたためた日時は、、、なんと使徒時代から何十年か経った頃の、AD2-3世紀のエジプトです。


そうなんです、少し前に「聖書ギリシャ語はどういう風に発音されていたの?―生きたコイネーの世界へようこそ! (2)」という記事の中で、「コイネー時代の民衆の手紙やメモ書きがパピルス文書の形でわんさかエジプトで発見された」ということを書きましたが、発見されたテオンくんの手紙もその中の一つなんです。


私はこの手紙を、先週、ギリシャ人の友だちと一緒に読んだのですが、あまりにもかわいすぎて、友だちときゃーきゃー言って、かなりはしゃいでしまいました。


今日、それを日本語に訳してみました。


あっ、その前に、簡単にこの手紙が書かれた背景をお話しますね。


テオンくんのファミリーは、コイネー期のエジプト南部にあるオクスィリンホス(Oxyrhynchos, Ὀξύρργυχος)という都市に住んでいました。オクスィリンホスは、カイロから160キロくらい南に下った所にある都市です。



Oxyrhynchos_map.gif



地図でみても分かるように、オクスィリンホスは内陸部にある都市です。日本でいえば、長野県かな?


でも、テオンくんは、おそらく学校のお友だちから、「アレクサンドリアっていう所は、でっかくて、すごいんだぞぉー。海もあって、すいすい泳げるし、晴れた日には、そこからヨーロッパも見えるんだって。」っと、北方の大都市アレクサンドリアの魅力について常々聞かされていたのだと思います、たぶん。




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アレクサンドリアには巨大な図書館がありました。旧約聖書のギリシャ語翻訳も、この都市でなされました。参照:「アレクサンドリア図書館にはどんな分野の本があったの?






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コイネー期の図書館はこんな感じだったそうです。






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現在のアレクサンドリア市 (エジプト)





さて、テオンくんのパパが、今度、その大都市アレクサンドリアに何かの用事で行くことになりました。


さあ、テオンくんは、なんとしてでもパパに「自分も連れてって~」とせがみます。


手紙は、その子の切なる嘆願をつづったものです。


*なお、テオンくんのお父さんの名前もテオン(Θέων)なので、便宜上、息子はテオン・ジュニア(テオン Jr.)と呼ぶことにします。




[和訳]



テオンJr.から、おとうさんへ。あいさつ。


ぼくを街に連れて行ってくれなかったなんて、ひどいよ!


もしも今度、ぼくをアレクサンドリアに連れて行ってくれなかったら、、、そしたら、ぼくはもうパパに手紙とか書かないし、話しかけもしないし、「行ってらっしゃい」ってパパを見送ってやったりもしないから。


そして、もしパパだけがアレクサンドリアに行くなら、ぼくはもうパパの手、握ってやんないし、もう二度とあいさつなんかするもんか。


もしぼくを連れて行ってくれなかったら、そうなるよ。[分かった、パパ?]


ママがアルヘラオスにこう言ってたよ。「置いてかれたら、この子はたいそうがっかりするわね」って。


12日、えーと、パパが船にのった日に、ぼくにプレゼント送ってくれてありがとう。


今度は、リラ(=たて琴, lyre)を送って。リラ、ほしいよぉ~、パパ、お願い!


でも、もし送ってくれなかったら、ぼくはごはん食べないし、飲み物だって飲まないぞ。それじゃ、てがみ、おしまい。




(参照:Papyrus Oxyrhynchus 119



theonletter.png
これがパピルスに書かれたテオンくんの手紙のオリジナルです。




そして、↓が手紙の原文です。


やっぱり小学校低学年の子どもの書いた作文なので、いたるところに、スペルミスや文法ミスがあります。ミスの部分は(*) です。


1. Θέων Θέωνι τῷ πατρὶ χαίρειν.
2. καλῶς ἐποίησες(*) οὐκ ἀπενηχες(*) με μετε ἐ-
3. σοῦ (*)εἰς πόλιν. ἠ(*) οὐ θέλις(*) ἀπενεκκεῖν(*) <με> με-
4. τὲ(*) σοῦ εἰς Ἀλεξάνδριαν οὐ μὴ γράψω σε(*) ἐ-
5 πιστολὴν οὔτε λαλῶ σε(*) οὔτε υἱγενω(*) σε,
6 εἶτα ἂν δὲ ἔλθῃς εἰς Ἀλεξάνδριαν οὐ
7 μὴ λάβω χειραν(*) παρὰ [σ]οῦ οὔτε πάλι χαίρω
8 σε λυπόν(*). ἂμ(*) μὴ θέλῃς ἀπενέκαι(*) μ[ε]
9 ταῦτα γε[ί]νετε(*). καὶ ἡ μήτηρ μου εἶπε Ἀρ̣-
10 χελάῳ ὅτι ἀναστατοῖ μὲ(*) ἄρρον(*) αὐτόν.
11 καλῶς δὲ ἐποίησες(*) δῶρά μοι ἔπεμψε[ς](*)
12 μεγάλα ἀράκια πεπλάνηκαν ἡμως ἐκε[ῖ](*)
13 τῇ ἡμέρᾳ ιβ ὅτι ἔπλευσες(*). λυπὸν(*) πέμψον εἴ[ς]
14 με παρακαλῶ σε. ἂμ(*) μὴ πέμψῃς οὐ μὴ φά-
15 γω, οὐ μὴ πείνω(*)• ταῦτα.

16 ἐρῶσθέ(*) σε εὔχ(ομαι).
17 Τῦβι ιη.
v
18 ἀπόδος Θέωνι [ἀ]π̣ὸ Θεωνᾶτος υἱῶ(*).






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テオンくんの作文添削


2行目 
ἐποίησες →ἐποίησας
ἀπενηχες →ἀπενέγκας

3行目
εἰ
θέλις→θέλεις
ἀπενεκκεῖν→ἀπενεγκεῖν

4行目
μετ→μετ
σε→σοι

5行目
σε→σοι
υγενω→ὑγιαίνω

7行目
χειραν→χερα

8行目
λυπόν→λοιπόν
μ→ἂν
ἀπενέκαι→ἀπενέγκαι

9行目
γε[ί]νετε→γίνεται

10行目
μ→μ
ἄρρον→αἴρων

11行目
ἐποίησες→ἐποίησας
ἔπεμψε[ς]→ἔπεμψας

12行目
ἡμως→ἡμς

13行目
ἔπλευσες→ἔπλευσας
λυπὸν→λύραν

14行目
μ→ἂν

15行目
πείνω→πίνω

16行目
ρῶσθέ→ἐρρῶσθαί

最後の行
υἱ→υἱοῦ



☆☆



みなさん、どうですか?この子の手紙を読んで、どんなことを感じましたか?


小さな子が「あれがほしいよぉー。あそこに連れて行ってよぉー」とねだりつつ、「そうしてくれなかったら、パパの手なんかもう二度と握ってやんないから。」と子どもなりの「脅し手法」(笑)を使っている点など、2000年前も、今も、子どもは――そして人間は――変わっていないなあと思わず微笑んでしまいます。


また、新約聖書が書かれているコイネー・ギリシャ語で、小さな男の子が実際に、手紙を書いている――。


この事実もまた、私たちをさらに生きたコイネーに近づかせ、より一層の親近感をもってこの言葉に接するきっかけにもなるのではないかと私は期待しています!



ταῦτα. (タフタ)


(=それじゃ、記事、おしまい) ←テオンくんのまね。









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