はじめに



キリスト教宣教史の中における最初の本格的イスラム伝道は、13世紀、レイモンド・ルール(Raymond Lull)の孤高な試みによってスタートを切ったといっていいでしょう。




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Raymond Lull (1232-1315)



しかしながら、教会史家のステファン・ニールの言葉を借りると、その後の数世紀間というもの、「イスラムの地は、クリスチャン・ミッションからほぼ見放された状態にありました。」註1


註1) Neill, Stephen. A History of Christian Missions. The Pelican History of the Church, Hammondsworth, Middlesex, England: Pelican Books, 1964.



しかし、19世紀後半になって、北インドおよびペルシャに遣わされた聖公会のヘンリー・マーティンが起こされ、その後、他の教派もおずおずと重い腰を上げ始めました。



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Henry Martyn (1781-1812)



そんな中、学生ボランティアのサムエル・ツヴェーマーという23歳の勇敢な若者が立ち上がりました。


この若者はほとんどどこの教派からの理解もサポートもなしに宣教地(アラビア半島)に飛び出して行き、結果として、彼の火のような生涯を通し、他の大型教団すべてが総がかりでも成し遂げられなかったようなこと――


つまり、キリストの福音がイスラムの地に伝えられることの絶対的な必要性――を無数のクリスチャンの心に訴えかけ、台風のような疾風と情熱でアラブ・ミッションに対する人々の姿勢を一転させたのでした。




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Samuel Marinus Zwemer, 1867 – 1952 
「イスラムへの使徒」とも呼ばれています。





サムエル・ツヴェーマーという器を米国ミシガン州で整えていた主は、同じ時期に、スコットランドの地においてもある一人の若者の人生に働きかけていました。


それが今日、この記事で取り上げようとしているヘンリー・ガードナーです。





生い立ち



ウィリアム・ヘンリー・テンプル・ガードナーは、1873年7月、スコットランドのアイルシャー州で生まれました。


父はグラスゴー大学の医学部教授で、いわゆるエリート家庭の子弟として彼は育ちました。



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William Henry Temple Gairdner



両親は福音的な信仰は持っておらず、ガードナー自身も幼少期から青年期にかけ、生きた神との交わりなしにこの世での歩みをしていました。




転機



しかしオックスフォード大学入学後、彼の人生に大きな揺さぶりがかけられました。


その頃、学内にはOxford Inter-Collegiate Christian Unionという福音信仰の学生宣教団体が熱心に活動しており、ガードナーもその感化を受け始めたのです。


しかし彼の「理性的な」目に、彼ら宣教団体の学生たちはあまりに「熱狂的」に映りました。


そこで彼は彼らの輪に入りつつも彼らとは微妙な距離をとることによって、自分はあくまで「静かで」「常識的な」証人になろうと努めました。


しかし彼はそういった自分のあり方に平安を感じることができませんでした。


その当時の心的葛藤を彼は家族に次のように書き送っています。



僕は知っているんです。これ(=キリストの福音)はやがて世界を征服すると。


でも、オックスフォードでは、もし誰かが自分の個人的な確信や熱心さを外に表わそうものなら、とたんに(マイルドな意味での)愚鈍者扱いされてしまう。。。


でもfanaticな奴だと思われるのを覚悟で、今、僕は自分の身の振り方を決めなければいけないような気がしてならない。。


ああ非常に困難を覚える。ここの大学にいると余計にその難しさを感じる。


そんな中、僕は他の人にこう訊かれたんです。「そういうあなた自身は、彼らより優った人物なのですか?」


いや、違う。僕は優ってなんかいない。優っているのはキリストのみ。


Constance E. Padwick, Temple Gairdner of Cairo (London: Society for Promoting Christian Knowledge, 1930), p.29.






つぎに続きます。


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倒されてもまた起き上がる!――エジプト宣教の先駆者ウィリアム・ヘンリー・ガードナーの生涯と信仰(1873 –1928)その2

木犀(もくせい)

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