little hero of holland


数ヶ月前、勇気あるペテロくんのお話(童話)を日本語にし、3才になる甥っ子の誕生日に贈りました。

実話を基にしたとてもいいお話です。目の見えない貧しいおじいさんをいたわる心、みんなを助けるために一晩中、堤防の穴をふさぎつづけるという勇気、そういったメッセージがこのお話の中には含まれています。

私はこちらでイランやアフガニスタンの難民の子たちに、このお話を(紙芝居にして)きかせているのですが、みんなペテロくんが大好きです。

英語版にはいろんなバージョンがあったのですが、翻訳に際しては、私なりに工夫して、こどもが読んで(聞いて)分かりやすいような文体・表現をこころがけました。

このお話が日本のこどもたちの心に届きますように。

『オランダのヒーロー ペテロくんのおはなし』

原題 The Little Hero of Holland (by Mary Mapes Dodge)

みんな、オランダっていう国をしってるかな?

オランダは、ヨーロッパにある、ちいさな国です。

むかし、そのオランダのハーレムという町に、8さいになる、ペテロくんというおとこの子がすんでいました。

オランダは、土地がひくく、なにもしないでいると、海の水がどーっと町にながれこんできます。

それで、オランダの人は、むかしから、いっしょうけんめい、高いかべをつくって、海の水から、町をまもろうとしてきました。この高いかべのことを、「ていぼう」といいます。

どんなにちいさな子どもでも、この「ていぼう」にあながあいたら、そこから海の水がどんどんはいりこんできて、家も、くるまも、ようちえんも、スーパーも、ぜんぶ、おしながされてしまう、ということをしっていました。

ペテロくんは、こころのやさしいおとこの子でした。ある日、おかあさんはペテロくんにいいました。

「ペテロ、町のはずれの、ヤンセンじいさんにこのケーキをとどけてくれる?」

「うん、いいよ。ヤンセンじいさんは、目がみえないし、ひとりぼっちですんでいる。すごく、かわいそう。ぼくは、じいさんをよろこばせてあげたい。」

そこで、おかあさんはいいました。

「ありがとう、ペテロ。でも、くらくなる前に、もどっておいでね。はい、これがケーキよ。」

「じゃあ、おかあさん、いってきまーーす。」

「いってらっしゃい。」

☆☆☆

ヤンセンじいさんのところにいくと、ペテロくんは、じいさんにケーキをわたしました。

そして、目のみえないヤンセンさんのために、海にうかぶふねのこと、きれいなお花や、たいようや、ていぼうのことをはなしてあげました。

ヤンセンじいさんは、とってもよろこんでいました。

☆☆☆
でも、しばらくして、そとをみると、いつのまにか、たいようがしずみかけていました。

「あっ、いけない。おかあさんは、ぼくに、『くらくなる前に、かえってきなさい』っていっていた。すぐにかえらなきゃ。ヤンセンさん、またくるね。さようなら。」

☆☆☆

こう言って、ペテロくんは、ていぼうのよこのみちをてくてくあるいて、家のある方に、もどりはじめました。

まわりは、どんどんくらくなっていき、風がびゅーびゅーふいて、さむくなってきました。

「あれっ?なんの音だろう?」とちゅうで、ペテロくんは、足をとめました。

シュ―、シュ―、シュー。

ていぼうの方からへんな音がきこえてきます。

ペテロくんは、音のするほうへあるいていきました。

シュ―、シュ―、シュ―。ボゴ、ボゴ、ボゴ。。。

「あっ、たいへんだ。ていぼうにあながあいている!」ペテロくんは、さけびました。

「すぐに、このあなをふさがないと、あながおおきくなってしまう。そして、おおきくなったあなから、海の水がどーっとはいりこんできて、ていぼうをこわしてしまう。

そして、ていぼうがこわれたら、海のみずが、町にながれこんできて、おとうさんも、おかあさんも、おじいちゃんも、おばあちゃんも、ともだちも、家も、くるまも、ようちえんも、みんな、おしながされてしまう!ああ、たいへんだ。なんとかしなきゃ。」

ペテロくんは、ていぼうによじのぼり、じぶんのゆびで、あなをふさぎました。すると、みずのながれは、とまりました。

「これでよしっと。ぼくは、こうやって、ゆびで、あなをふさぎつづけて、ハーレムの町を、海のみずからまもるぞ。」ペテロくんは、うれしくなって、こう言いました。

でも、5ふん、10ぷん、20ぷんと、じかんがたつうちに、ペテロくんは、ふあんになってきました。

あたりは、もうまっくらになり、とおりには、だれもいません。つめたいかぜがびゅーびゅーふいてきて、ペテロくんのからだはぶるぶるふるえ、ゆびはカチカチになってきました。

「だれか、きてください。だれか、きてくださーい!」

ペテロくんは、おおごえでさけびました。でも、だれもきません。

ペテロくんは、なきたくなりました。それで、かみさまに、いっしょうけんめい、おいのりしました。

ペテロくんは、こわくてたまらなかったけど、だいすきなおとうさん、おかあさん、おじいちゃん、おばあちゃん、おともだちみんなを、海のみずから、まもろうとおもいました。

こうして、ペテロくんは、ひとばんじゅう、ゆびであなをふさぎ、たったひとりで、海のみずとたたかいつづけました。

☆☆☆

こうして朝になりました。

むこうのみちから、牧師さんが、やってきました。

牧師さんは、ていぼうにはいつくばっているペテロくんにきがつくと、いそいで、やってきました。

「ペテロくん、いったい、どうしたの?そんなところで、なにをしているの?」

「せんせい、ぼくは、海のみずがはいってくるのを、ゆびでおさえているんです!」ペテロくんは、おおごえで言いました。

「ここのていぼうにあながあいているんです。すぐに、みんなをよんできてください。」

それをきくや、牧師さんは、おおいそぎで、みんなをよびにいきました。

町のひとは、すぐに、シャベルをもって、かけつけ、あなをふさぎました。
そして、ペテロくんを、家につれていってあげました。

☆☆☆

こうして、町じゅうのひとが、ペテロくんに、ありがとうを言いにきました。

「ペテロくん、きみは、ぼくたちみんなのいのちをすくってくれたんだ。きみは、ゆうきのある子どもだ。ほんとうに、ありがとう!」

この日から、なんびゃくねんもたちましたが、いまでも、オランダのひとびとは、ペテロくんのことをけっしてわすれていません。

そして、みな、ペテロくんのことを、「オランダのヒーロー」とよんでいます。


         おしまい。

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ハイジの著者による児童文学 『ヤギかいのモニ』(ヨハンナ・スピリ作)第1章

ひとりひとりを大切に

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